リトルマーメイドと人魚姫

ディズニーのリトルマーメイドを見ました。

とてもゴージャスで、自分も海の中にいるような臨場感で楽しかったのですが、

同時に、現代におけるリトルマーメイドの立ち位置や

アンデルセンの人魚姫が私に与えた影響を考える機会にもなりました。


音楽も歌も映像もキレイだし、見応えがあって、とてもよかったです。

主人公のハリー・ベイリーだけではなく、色々な人種の俳優が出演していて、

様々なところに詳細な配慮も感じました。私は昔、スペインに住んでいたので、

スペインの誇る俳優ハビエル・バルデムが出演していたのも嬉しかったです。


エンディングで陸と海の民が、互いに共生していこうとする様子には、

現在の世界目標である「人種を超えた多様性と包括的な世界を」、

というメッセージも込められていました。

メインテーマもわかりやすく、親子の関係、親離れ子離れ、

子どもの気持ちを尊重する子育てが扱われていました。

目標があるならば、なんでも自分の力で試してみる、失敗しても進んでみる。

そして、親は子どものそんなチャンスを邪魔しては行けない、

親の考えで縛っては行けないというテーマがメインでした。

王子様とお姫様のラブロマンスばかりが強調されていないのがよかったです。


もちろんアンデルセン童話の人魚姫が原作なので、

焦点が多少変えられているものの、

リトルマーメイドが愛する王子様に会うために、体の形を変え、声を無くし、

人間の世界に向かうという設定はそのままです。

原作とは違って、王子様と人魚姫は結婚してハッピーエンド。

苦痛を伴って身体を変える自己犠牲は気になるものの、

アリエル本人が「人間世界に行きたい、足を使って歩いたり踊って見たい」

と希望して嬉しそうにしているので、これはこれでありなのでしょう。

自分の居場所は自分が決めた方がいいですし、

整形手術や性転換手術なども本人が必要としていて、

変えた方が心身が落ち着いて幸せを感じるなら、

受けた方がいいと私は考えているので、

アイデンティティロスや過剰な自己犠牲ではなく、

そういう変化の一つだったのかもしれないと解釈してみたり。

エリック王子は、おとぎ話の王子様よりも物事を理解して歩み寄る覚悟がありそうなので、

今後の幸せを願いたいと思います。


人魚姫という話にはひっかかりを持ちながらも、

いったん始まれば、あっという間にディズニーマジックにかかり、

歌に魅了され、映像に圧倒され、お魚のフランダーの実写版に、

「マジで魚!でも可愛い〜」と驚かされ、

泣いたり笑ったりしながら世界観に引き摺り込まれて浸ってきました。


子ども達が幼いころ、ディズニーチャンネルでリトルマーメイドを見ていたので、

「ああああ〜」というイントロも懐かしかったり、

ディズニーseaでアリエルと写真も撮ったことも思い出したり、

パワフルで繊細な歌声が全身に響き渡って共鳴すると、

よくわからないうちに色々な気持ちで泣かされてしまいました。


ただ、そうやって素直にアリエルの世界観を楽しんでいると、

その楽しい気持ちにくっついて、

胸の奥から少しダークで不思議な気持ちがモゾモゾ湧いてくるのです。

それは、毎回子どもたちとリトルマーメイドを見るたびにも感じていた、

ほんのり苦しい気持ち。

「アリエルは前向きで、かわいい。」と思いながら、

胸の奥底でグラグラと揺さぶられる感覚。

がんばり屋さんで、明るく幸せを勝ち取る輝かしいアリエルは好きだけど、

その気持ちに相反し、毎回見る前にみぞおちがギュッと硬くなって、

「ちょっと見たくないかも」という体の抵抗感。


今回、映画のリトルマーメイドを見ながら、徐々に、

その動揺の震源地は、元祖「人魚姫」だと判明しました。


それは、私が初めて「人魚姫」のお話に出会った

5歳のころに感じた衝撃でした。

幼いころから、絵本や物語が好きでよく本を読んでいましたが、

その中で強く記憶に強く残っているのが「人魚姫」です。

50年近く前、まだアリエルが誕生していない頃のアンデルセンの人魚姫。


私が読んだ人魚姫は、ざっくりと、こんな話でした。

嵐の夜に溺れる王子様を助けた人魚姫は、人間世界で王子様に会うために、

美しい声と引き換えに足を手に入れます。(足を手に入れる。笑)

王子様は、助けてくれた女の子を探します。

二人は出会えて仲良くなるのですが、人魚姫は声が出ないので助けたのが

自分だと伝えることができません。

奥ゆかしい人魚姫は、アリエルみたいに奔放に王子様を魅了することもできず、

そうこうしているうちに、王子様は隣の国のお姫様と結婚をします。

人魚姫の姉人魚たちは、魔女を訪ねて、妹を人魚に戻してほしいと頼みます。

姉達は、美しい髪の毛と引き換えに短剣を手に入れ、

魔女に「人魚姫が王子様とお姫様をこの短剣で刺せば、戻してやる。」と言われます。

人魚姫は、姉たちから短剣を受け取り、

王子とお姫様の寝首をかこうと枕元に立つものの、

王子様の寝顔をみて「ああ、そんなことはできないわ〜」と断念。

姉たちの待つ海へ向かい、「できなかった〜」と途方にくれる人魚姫。

海に飛び込むと、ぶくぶくぶく、海に一面に綺麗な虹色の泡が。

人魚姫は美しい海の泡となったのでした。


5歳の私は、あまりにショックで、緑色の表紙の人魚姫の絵本を

何度も何度も読み直しました。

今、最後の虹色の泡が描かれているページを思い出しても、

胸が締め付けられて涙が出てしまいます。

何回も読めば結末が変わるかもしれない、という希望も虚しく、

人魚姫は泡になったままでした。


今思えば、当時の私は、あっけにとられて泣くことすらできず、

「あれ、おかしい、泡になったというのは、何かの例えに違いない。

死んだわけじゃなく、なんかしらの形で、幸せになったのかもしれない。

なにか見落としたかな。ページが足りないんじゃないか?」

などと思って、何度も何度も緑の薄い絵本のページを

前から後ろ、後ろから前へとめくったのを覚えています。

心の奥では「人魚は、死んじゃった。」とわかっているのに、認められなくて、

その気持ちを消化できないままでした。

深い悲しみは胸に刻まれて、こびりついていたようです。

47年もたったのに、いまだに「人魚は、死んじゃったんだ。」

という悲しみがくっついているのを感じます。

悲しみは黒い塊となって、地震の震源のように奥深くで生き続け、

きっかけがあるとグラグラするようです。


この絵本を読んでいたのは、ちょうど母親が妹をお産する時でした。

父親が、その間、私がおとなしくしているように買い与えた

朗読カセットテープのついた絵本でした。今でいう、オーディオブックです。

私たちは、当時、駐在員家族としてアメリカに住んでいました。

近所のイタリア系アメリカ人のローズやアルにイタリア人家族流に手厚く可愛がられ、

父親にも普通に世話になっていたものの、一人で繰り返し人魚姫を読んでいました。

とはいえ、普段も一人で遊んでいることが多く、母親と仲よかったわけでもないので、

一人遊びをすることは大した問題ではなかったと思うのですが、

もしかすると、色々な気持ちが合間って孤独感が強調されて、

その頃の記憶が強いのかもしれません。


ディズニーの明るいアリエルの話は、エリックとも意思の疎通ができるようになるし、

悲しい思い出を塗り替えてくれても良さそうですが、やはりそれとこれは別。

あの緑の絵本の人魚姫は、別の人魚姫として、ちゃんと胸に刻まれています。


無意識だけど、確実に刻まれている、自分に影響する出来事。

こういうのをトラウマっていうんだな、と痛感しました。

今回、映画リトルマーメイドのおかげでトラウマの存在に気づくことができたので、

黒い塊も報われることを願っています。今の所、何も変化はないけれど。


人魚は魅惑的だから、誰もが魅了されると思いますが、

「人魚」とつくものには、異様なまでの吸引力を感じます。

もしかしたら、あの緑の絵本の人魚姫の結末を塗り替えられるものに

出会えるんじゃないかという期待もあるかもしれません。


ちょっと話が悲しみから恐怖に変わりますが、

安部公房の「人魚伝」は、また違った形で、私の人魚への執着を強くしてくれました。

滑稽でホラーな「人魚伝」に登場するのは、

緑色でギザギザの白い歯が光る、男を狂気へと誘う愛くるしい人魚。

人魚が目から出す涙のような液体も、中毒性があって怖いのです。

ある時から私の中で、安部公房の人魚の描写は、スタバの人魚と重なり

スタバに行けなくなりました。

だって、スタバの美味しい商品に魅了されていると、

あの人魚が背後に忍び寄ってきて食べられそうでゾクゾクしちゃう。

スタバの商品って本当に魅惑的で、私にとっては、ちょっと中毒性があります。

それがまた人魚の涙のようで、怖い。

美味しい、チャイティラテ、シナモンロール、レモンバーム。

うっかりすると、人魚の虜になってしまいそうです。

全てがお客様を魅了して虜にする、人魚システムそのもの。

スターバックスの創業者、さすがです。


ちなみに、スタバの人魚は、2本ヒレのセイレンです。参照*1

美しい歌声と姿で人を誘って死なせちゃうセイレンの2本のヒレは、

しなやかな脚のようです。

さらに、紀元前330年頃のセイレーン像は、2本のヒレが

アヒルやガチョウのような「鳥の脚」になっています。参照*2


そして、鳥脚の人魚といえば、3本脚ですが「アマビエ」です。

最終的に、アマビエ、スタバ、リトルマーメイドは親戚ってことになりました。

だから、映画リトルマーメイドは、このwithコロナのご時世に制作されたのかな。

などなど、どんどん話が延々派生していまうので、この辺で終わりたいと思います。

私の人魚に関する思い出でした。


勝手にいろいろ添付して怒られないといいのですが。ご参考まで。

 

参照*1 スタバのロゴの移り変わり。

参照*2

羽もあるし、脚もあるし、人魚なの?という感じですが、紀元前のセイレーン。

おもしろいですね。

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